意識の融解
意識の融解
高速道路は夜運転するに限る。

空には星が煌めいて、地上には夜景が輝いて。そんな中でアクセルを踏み込めばつらい日常があっという間に視界からも記憶からめ消えて行くから。

昼の仕事モードの私は、自分は小さいながらも業界を構成する歯車の一つであることを自覚して、その回転を止めないようただひたすらに仕事にのめり込む。

そんな、私の脳内をいっぱいに占領してあれほど私を苦しめていた仕事も、実は角度を変えれば経済活動のごくごく一部にすぎない。

(ほんとは、私がいなくても経済にはなんの影響もない。そんなことはわかっている。)

昼はまるでスポットライトを浴びているかのように活動的に仕事をこなさざるを得ない私も、夜になれば照明も当てられず、すっかり色褪せてしまう。

そうして私は闇に溶けてしまうのだ。

夜を実感するたび、私は自分が世界を構成するちっぽけな要素の一つにしかないことを再認識して、安心する。

照明が当てられなくなるのは私だけではなく、明かりが消えたオフィスも、夜には夜景を構成する背景の一部でしかない。


この世の構成物は全て端役。

そうして私は安堵する。


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