トレイン


浮気だって一度もしたことがないし、職場の付き合いだって、ほとんどリカを優先させて断った。不眠症のリカが深夜に電話してくると、リカが眠るまで話し続けた。電話を切る前に必ず愛してる?と訊いてくるリカに、僕は照れながら愛してると答えた。嘘じゃなかった。僕はリカと出逢って、初めて愛しいという言葉の意味を知った。この世の誰よりもリカのことを信頼していた。

それは何年たっても変わらない気持ちだった。変わらないはずだったのに・・・・・、僕の気持ちは不安で覆われて、バランスを崩していた。

何処かでリカを疑っている自分がいた。今まで気にもしていなかったリカの仕草がやたらと目につく。携帯を開いている時や、一緒に映画を観ている時も、スクリーンより隣に座るリカの表情が気になった。キスをする回数もなんだか減っているように思えた。セックスをする時だって、前はもっと自分の名前を呼んでくれたのに、なんてくだらないことを考えた。

そんな自分が嫌で、情けなかった。他に好きな人はいないというリカの言葉を、僕は100%信用することが出来ていなかった。


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