トレイン


それから二人でテレビをしばらく眺めた。ドラマか、クイズ番組か、それともバラエティーなのか、内容は一切覚えていない。リカと何か話をした気もしたが、ファミレスで隣のテーブルから聞こえるカップルの会話のように、僕の頭からふわふわと消えていった。


「お茶入れてあげる」

リカがそういって座椅子から立ち上がった。その声を聞いて、僕は我に返った。あっという間に時間は過ぎて、時計の針は11時を回っていた。テーブルに置かれた湯呑みからは、入れたての緑茶の良い匂いがする。お茶の味なんてわからないけど、旅館のお茶からは、なんとなく高級な味わいを感じる。

「美味しい?」

「うん、美味しい」

リカの入れたお茶は、身体の芯をゆっくりと温め、お互い座椅子にもたれかかりほっと一息つく。しんと静まりかえった穏やかな空気が部屋や中を包み込む。

しかし、その空間を切り裂くように、テーブルの上にあったリカの携帯が唸り声を上げた。

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