トレイン
マナーモードの携帯はLEDから七色の光を放ち、バイブの振動でテーブルの上を徐々に移動している。
液晶の窓には文字にはEメールの文字の下に『マコト』という名前が表示されている。男とも女ともとれる中性敵な名前。
「メールきてるよ」
僕はテーブルで唸っている携帯を拾い上げリカに渡そうとした。なにげない日常の動作のはずだ。
しかし、リカの挙動は明らかにいつもとは違った。
慌てた顔をして、素早く僕の手から携帯を取り上げる。そのままベッドの上に飛び乗り、離れた所でメールを確認してパチンとフラップを閉じた。
「マコトって誰?」
僕は思わず訊いてしまった。リカの友達の名前はだいたい知っているつもりだった。よく連絡をしている友達は限られていて、そのうちの一人とは三人で食事をしたことだってある。『マコト』という名前は初耳だった。そんな名前の友達は聞いたことがない。
「高校の時の友達だよ。最近連絡がきて、よくメールしてるの」
かんぱついれず答えは返ってきた。それがよけいに怪しく感じた。
「ふ~ん。そうなんだ」
「疑ってるの?」
「別に・・・」