トレイン
「みんなちゃんと挨拶しましょうねー。こんにちはー」
こんにちはー!直ぐさま園児たちが一斉に声を上げる。
「こんにちは」
リカは嬉しそうに園児たちに挨拶を返した。なんだか泣きそうなくらい絵に描いたような光景だった。
「カワイイね」
園児たちを見ながらリカが優しく微笑む。小さい子供が大好きなリカは、こういう時決まって同じ顔をする。切ないくらいに優しい天使の微笑。
それを見るだけで、僕は幸せな気持ちになれた。自分も優しい人間になれた気がした。だけど、今は・・・・・。
「リカ、あっちの方も観に行こうよ」
僕は美術館のパンフレットを右手に持ちながら、リカの手を引く。予想よりも美術館の敷地は広かった。始めは元気だったリカも、歩くのが進むにつれ口数が少なくなっていた。
「ちょっと疲れたから、アタシここで待ってる」
そういって、リカは近くにあるベンチに腰を下ろした。
「わかった。ちょっと観てくる」