銀杏ララバイ
5・霊刀・正宗

「お姉ちゃん、自分が何を言っているのか分かっているのか。

あいつがギナマだって… 
まだ4歳の子供だぞ。

赤ちゃんの時からここで育っていたのだぞ。
確かに顔や雰囲気もそっくりだけど、
まだ4歳だぞ。

僕たちは2日前の夜までギナマと話をしていたと言う事を忘れたのか。

16歳と言う年齢は確かかどうか分からないけど、

背は姉ちゃんより高かった。

そのギナマが、どうしてここにいる4歳の鳶人になるんだよ。

お姉ちゃんは話をしたと言うけど、

あの鳶、銀杏丸だってあの時、確かに庭にいた。

僕たちはあいつが眠っているのを確かめるように

ちょっかいを出したりしていたから間違いは無い。

あいつ、鳶人を見て嬉しそうに近寄って来た。

絶対にお姉ちゃんのところになど行っていないよ。」



かおるが昨夜起こった事を話すと、
孝史はとても信じられないらしく、

興奮した顔をして、
玄関先で鳶の銀杏丸と戯れている鳶人の動きを見入っている。



「でも、ギナマには不思議なチャクラがあって、

あの家の周りも結界を作っていたでしょ。

それを考えれば時間のコントロールも… 

あ、でもそれはギナマのお父さん、
実鳶と言う人がしたらしいわ。

私が話したのも彼よ。」



チャクラとか結界と言う様な言葉なら、

孝史もはっきり思い出すだろうと思ったが… 



「だってその人は自害したと聞いたじゃないか。

ギナマが形見の刀を見せてくれた。
忘れちゃったのか。」



孝史は自分の目で見た事だけを、

そう、自分の夢に出たギナマだけを信じているらしく、

かおるの話に入るのは難しいようだ。


確かにあの家にいる間、
午前中の数時間は歴史本を読んでいたが、

11歳の孝史が、鎌倉時代云々をどこまで把握したのかさえも疑問だった。

かおるでもはっきりしないところがかなりあった。
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