銀杏ララバイ
放火されたのは楠木金融と言う貸金業者で、
新宿の三階建てのビルで最上階を住宅スペースとしていた。
犯行が行われたのは昼下がり、
幸い客は無く、
常駐していた2人の事務員が席をはずしていた時の事だった。
逃げ遅れて焼死した被害者は
社長の楠木源三(71歳)と息子で専務の和弥(38歳)だった。
犯人として摑まったのは、
父親の借金のためにソープに売られた娘だと言う事だった。
借金のかたに売られるだけでも普通の事では無いと言うのに、
和弥は気が向くとその娘のところへ行き、
その娘の体をもてあそんでいたらしい。
それで我慢出来なくなった娘と父が、
共謀で放火したらしいが、
実際は、その父親は放火だけでは気が済まなかったらしく、
楠木親子を鈍器で殴りつけてから火を放ち、
事の成就を見届けてから高速道路の陸橋から飛び降り自殺をしていた。
娘は父の最期を見定めてから、警察へ自首したと言う。
そうか、アレは実鳶とは関係なかった。
そう思ったかおるの目に,
飛び降り自殺した男の名前が、野本雄介(47歳)とあった。
47歳… 父さんと同じ歳だ。
まさか父さんの友達、確か高校の同級生とか言っていた。
名前は聞かなかったが、
一緒に東京の大学へ来た事からずっと仲が良かったらしい。
それでもお互いに家庭を持ち次第に交流も無くなったが…
不景気で野本は立ち上げた会社が倒産しそうになった時、
父さんを思い出した。
サラリーマンの父さんは家を建てたばかりで貯金すら無かったから、
友達のために保証人の判を押した。
あの事はそう言うことだったのではないのだろうか。