指輪
これから3限の講義が始まる。
友達の美咲がギリギリで教室に入ってきた。
「セーフ。優衣、おはよ。」
「…おはよ。」
「元気ないじゃん。どうしたの?恋人となんかあった?」
あたしの薬指に光る指輪をコツンと爪で弾いた美咲が聞いてきた。
「なんも…ないよ。」
「そ?ならいーけど、なんかあったら聞くくらいはできるからね。」
美咲はきっと気づいてる。
それ以上追究しない気遣いに涙が出そうになった。
でも、ごめん。今は誰とも話したくない。
「ん、ありがと。昨日寝てないだけなんだ。DVD見ちゃって。これ終わったら起こしてくれる?」
「おっけい。おやすみー。」
そう言ってあたしは自分の腕に顔を埋めた。
伏せたところでいつものように睡魔なんて襲ってこないのに。