指輪

あたしの数メートル前には誰かに笑いかける貴方がいる。

こっち向いてよ。

あたしがそう思った瞬間貴方が振り返る。

その時の顔は、あの冷え切った表情だった。


「はぁ、はぁ…。」

目を覚ますと既に周りは真っ暗で、あたしの額を嫌な汗が伝っていった。

振り向いた琢磨の顔が頭から離れない。

「も、もう…やだよっ。うー…た、くまぁっ…ひっ。」

もうおかしくなりそうだった。

まだこんなに好きなのに。

でも、もう本当に終わりなんだ。

いつまでも鳴らない携帯が終わりを告げるのには十分すぎる証拠。

もう泣くのは今日で終わりにしよう。

指輪ももう少ししたら外そう。

だから、もう少しだけ勝手に貴方と繋がっていさせて下さい。
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