こんな僕たち私たち
2章-10<薔薇咲く瞳と、初体験>

 神出鬼没な七緒さん。

 一体いつからいらっしゃったのですか。

「今、朝練終わったとこ。体育館から教室戻るのってここ通ると近いから。そしたら心都のすっげー大声が聞こえてきてさー、俺、また何かあったのかと。ほら前にもこんな事あったじゃん」

 へら、とジャージ姿の七緒が笑う。

 うん。気に掛けてもらえるのは、とてもとても嬉しいんだけど。

こんな髪の毛振り乱して喧嘩中の姿、死んでも見られたくなかったよ。あぁ泣けてきたわ。

 そんな私とは正反対で、

「七緒先ぱぁぁい!」

 と、喜びに満ち溢れた声をあげたのはもちろん禄朗。

「お、おー禄朗」

 七緒がぎこちなく左手を挙げた(右利きなのに)。

やっぱりまだ、昨日の涙が気になっているんだろう。
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