渇望-gentle heart-
「俺もさ、最近思うんだ。」


ゆうくんは言う。



「この街はやっぱ濁ってて嫌だしさ、ジュンみたく生きるのも楽しいんじゃねぇかなぁ、って。」


「けど、金はないよ?」


「ははっ、まぁ、ここにいたら何がマトモなのかもわかねぇけどな。」


ホストとして生きた日々を懐古してみれば、金と酒と欲にまみれすぎていた。


体を壊し、心をすり減らした中で、自分自身を見失う人も多かったっけ。


だからこそ、俺は百合と出会えたことに感謝してるんだ。



「なぁ、お前はこの街を出たこと、後悔してねぇの?」



するわけないじゃないか。



「毎日さ、色んな事があるけど、生きてるって実感できて楽しいよ。」


だからどうかお願いだ。


百合、あの人のところには行かないで。


今の俺にはそんなことを言う権利なんてないけれど、でも、あの頃からずっと、お前の一番近くにいたかったんだ。


すると、こちらを見たゆうくんは、ふっと笑う。



「そんなに百合ちゃんのことが気になるなら、さっさと行けよ。」


「…えっ…」


「お前の頭の中は、何年経っても変わらないしな。」


そして、俺を追い払う仕草を見せ、



「何を悩んでるのか知らねぇけど、大切なもんは待ってたって来てくれねぇしさ、たまには自分から走っていくことも大事だぜ。」

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