渇望-gentle heart-

mild breeze

春を迎えた頃、田舎町から手紙が届いた。


真綾が嬉しそうに俺に自慢して見てくれるそれを覗き込むと、懐かしいふたりからの近況報告と、無駄に入れられたプリクラの山。


百合とジュンからだ。



「あいつら、何だって?」


「ジュンがお店出したんやって!」


「嘘だろ?」


「これがマジらしいねん。
おまけにこんなにラブラブっぷり見せつけるプリクラまで入れてくれて、アホなふたりやんなぁ?」


このふたりが何を乗り越えて今、共に過ごしているのかはわからない。


けれど、文字から溢れ出んばかりの楽しそうな毎日を読み解くと、それだけで嬉しくなってしまうから。


元気そうで何よりだ。



「百合りん今、すんごい幸せなんやって書いてるわ。」


「あの百合がそんなこと書くだなんて、想像出来ないな。」


記憶の中のアイツは、いつも消えてしまいたいと望むような目をしていたのに。



「ジュンはずっと百合りんのこと好きやったから、きっとそれが通じたんやろうね。」


「すごいね、それ。」


と、言った俺に向け、



「アホ!
うちもずっとアンタのこと好きやったっちゅーねん!」


「え?」


何だか突拍子もない事実を告げられてしまう始末。


懐かしいやつらからの手紙は、時として、こんな驚きまでもを運んでくれた。


あの街で、同じ頃を共に生きたふたりよ、どうか手にした日々を大切に。

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