青騒のフォトグラフ―本日より地味くんは不良の舎弟です―



目を細めながら俺はボンヤリと思考を回す。答えは出てこない。


肩を竦めて地面に目を落とす。

歩く度に動く俺の影は長く伸びている。

影を踏み付けるように速足で追うけど、影も動くから踏み付けられない。



そうやって追って影を踏み付けるように速足で歩いていたら、長い影がもうひとつ伸びてきた。



見る限り、影は走ってきている。

俺は歩調を落として後ろを振り向く。そして足を止めた。


「やっと追いついた」


俺の前で足を止めて、膝に手を置きながらあがった息を整えている追い駆けてきた影。


「ケイ、おまえ……歩くの……速ぇって……さすが、チャリ漕ぐの……速いだけあるっつーか。そのカラダでよく、速く歩けるっつーか」


見事に染まっている金髪に赤メッシュ。

大きく息を吐いて軽く折った体を起こすヨウに、俺は目を削いでしまう。

まさか舎兄が俺の後を追って来るなんて、微塵も予想もしないじゃないか。


「なんで……ワタルさん達と一緒に行かなかったのか?」

「俺はっ、パスしてきた。っはああぁぁー……シンドかった」


素で驚いている俺にヨウは「途中までいいか?」と聞いてきた。

追って来てくれたのにダメなんて言えないだろ。不良にそんなこと言えるほど、俺、気が強くないしさ。

寧ろそんなこと言うなんて恐いしさ。言葉の代わりに首を縦に振って返事をした。



伸びた俺達の影が本体に合わせて、ゆっくりと動く。

陽のあたたかさを背中で感じながら、俺達は影の後を追っていた。



上着のポケットに手を突っ込んで俺の隣に並ぶヨウが、不意に「変な感じだな」と話題を切り出してくる。


「お前っていつもチャリに乗っているのに。今日は歩き。妙な気分」

「俺だって歩きの時くらいあるぜ、ヨウ」

「俺の中じゃ常にチャリ乗って爆走しているイメージがあンだよ。めっちゃ狭ぇ裏道とか難なく抜けられるし、ぶつかりそうになってもギリギリでかわすし。お前のチャリの腕、スゲェし」


「そっかなぁ。慣れれば誰でもこなせるもんだぜ、チャリって。それにチャリ……あ、そういえば俺のチャリ」


忘れていた。

俺、日賀野から逃げるよう利二に言ってチャリを貸したんだっけ。


多分、ゲーセン前に放置されていると思うんだけど。

さっき利二にチャリのこと聞けば良かったな。

利二が俺のチャリの鍵を持っていると思うし。


「なんかあるのか?」


話を中断した俺を不思議そうにヨウが見てくる。何でもないとばかりに俺は肩を竦めてみせた。

「変なヤツだな」

怪訝な顔をして俺から目を放すヨウは、道に転がっている小石を見つけて爪先で軽く小突いていた。小石は電柱に当たる。



「ヤマトとは中学からの付き合いだった」



突然始まった昔話に俺はヨウを凝視する。

気にすることもなくヨウは話を続けた。

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