青騒のフォトグラフ―本日より地味くんは不良の舎弟です―



いや、あいつ等のためじゃねぇよ?


あいつ等のためでもあるけど、もしも何かあった時、俺、何もデキないと思うし、寧ろ見捨てちまいそう。

格好良いことをしているようで、実は自分のためだ。

騒ぎまくっている生徒達の声が聞こえてくる廊下の方を見た瞬間、教室のドアが勢いよく開いた。


俺は思わず絶叫を上げたくなった。

教室に入ってきたのは、予想していたヨウでもワタルさんでもない。



「田山圭太っつーのは、どこだ? このクラスって聞いたんだが」



き、昨日の赤髪の不良さまじゃアーリマセンか! どうして俺のお名前を知っているのでしょうか?!

なに、貴方様は俺と同じ学校だったってヤツ?

だって、昨日は私服だったじゃないですか!

やば、これはヤバッ!


俺、あの人に二回も恨みを買うようなことをしちゃったんだよね。


一回目は、ヨウとの喧嘩の最中。

二回目は、ヨウと帰っている最中に恨みを買うようなことを。


勿論、不可抗力だけど! っつーか、全部ヨウ絡み、元凶はアイツだ!


俺は弁当片手にコソコソと机の陰に隠れながら、教室の後ろのドアから出ることにした。


「おい! そこでコソコソしているヤツ! 田山圭太だな!」

「ッ、やばっ」


俺は素早く立ち上がり、慌てて駆け出した。

机や椅子を蹴りながら俺を追い駆けてくる赤髪の不良さまは、凄まじい形相をしている。


「覚悟しろ!」

「ごめんって! でも、あれは不可抗力だったんだって!」


机の上に飛び乗って、俺は赤髪の不良さまから逃げる。


その途中でちょっと弁当を食べる。


だって弁当食べる時間だし! 弁当残すの勿体無いし! 横野から「行儀が悪いです!」って指摘されたけど、カンケーねぇ!


髪の不良さまは気に喰わなかったらしく、口元を引き攣らせて指の関節を鳴らしていた。

「舐めやがってゴラァア!」

「ギャー! 舐めてはないからー!」


「待ちやがれ! 田山けいッ、どわぁあああ!」


赤髪の不良さまがド派手にコケた。

どうしたのかと俺が首を傾げれば、透が今のうちにとばかりにニッコリと視線を送ってきた。

どうやら透が赤髪の不良さまの足を、上手に引っ掛けたようだ。


マジ透カッケー、地味にカッケー! お前、薄情者だけど勇気ある!


俺は片手を出して透に感謝すると、机から飛び下りて教室から逃げ出した。


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