青騒のフォトグラフ―本日より地味くんは不良の舎弟です―
「イッテー! 誰だよッ、後ろから蹴ったヤツ!」
「やっと、見つけたぜ。田山圭太」
ゲッ、その声は。
「イッテー! 誰だよッ、後ろから蹴ったヤツ!」
「やっと、見つけたぜ。田山圭太」
ゲッ、その声は。
恐る恐る後ろを振り返れば、あらまぁ素敵な形相をしておられる赤髪の不良さまが立っておられるじゃアーリマセンか。
俺は愛想の良い顔を作った(つもり)。
青筋がいくつも立っている赤髪の不良さまは、俺の愛想の良い顔が相当気に喰わなかったらしい。
ズッコけて地面に倒れている俺の胸倉を掴んで立たせてきた。
「ギャァアアア! ストップ! 喧嘩は良くないっ、暴力は何の解決にもならないって!」
「ウルセェ! このッ、俺に喧嘩を吹っ掛けてきたのはそっちだゴラアア!」
「いやぁ、俺はそんなつもり全く無かったんだって」
「あ゛あ゛?」
こやつも母音に濁点を付ける輩か。
おかげで俺、足が竦み上がっているんだけど! どうして不良さまは一々母音に濁点を付けるんだろうなぁ。俺には分からん。
「テメェのせいでな。俺は荒川庸一に二度も負けたんだぜ⁈ 一度目はテメェがチャリで俺をひこうと……いやひいたせいで。二度目はテメェが荒川庸一と一緒にチャリで逃亡したせいで」
「あ、逃げたことは負けにならないんじゃ。ホラ、ロープレでも戦闘から逃げ出したらノーカンだろ?」
「ロープレだぁ?」
いや、だってロープレとか戦闘場面で逃げ出したらノーカンされるじゃん。
最近のゲームは逃げ出した場面もカウントして記録に載ったりするけどさ。
俺の発言に赤髪の不良さまは、口元を痙攣させていた。
うん、もしかして怒りを煽った? 煽ったんだろうなぁ……俺のおばか! 怒らせてどうするんだよ!
「テメェ、俺はゲームなんざしねぇんだ! 知るか!」
「へ? あ、そうなんですか。あははは、こりゃまた失礼。けど、逃げることと負けは」
「逃げる際、俺の顔面に鞄ぶつけてきやがった野郎は何処のどいつだ!」
鞄……俺ですね、投げましたね、スミマセン!
でもあれは、自己防衛が働いたんですよ!
だって、あんた恐かったんですよー!
片手の指の関節を鳴らしながら、赤髪の不良さまが俺を見据えてくる。