青騒のフォトグラフ―本日より地味くんは不良の舎弟です―



立ち上がった拍子に、真っ赤なタコさんウインナーが白飯(ふりかけ付き)と一緒に地面に落ちてしまった。

折角缶コーヒーの衝撃にも堪えていたというのに、残念。


そして笑える。笑っちゃイケねぇけど笑いたい。


必死に我慢していたら、米粒が赤髪の不良さまの頭についているのが目に飛び込んできた。


しかも本人は気付いていない。


いや気付いているんだけど、どうしようもないんだろうな。

とにかく赤髪の不良さまは敵意剥き出しでヨウを睨んでいる。


一方のヨウは落ちた白飯(ふりかけ付き)と真っ赤なタコさんウインナー、そして赤髪の不良さまの頭に付いてる米粒を見て、一瞬間を置くと軽く吹き出して大爆笑した。



「ククッ……ダッセぇ。お前ッ、頭にナニ乗せてるんだよっ。特に真っ赤なタコウインナーっ、お前それ髪の色と何か関係あンのか? ダッセぇ」


「う、う、う、ウルセェ! こいつのせいだ!」



俺を指差して赤髪の不良さまが吼える。

笑いながらヨウが俺の方を見て、「何したんだよ」と聞いてきた。

俺はちょっとばつ悪い気持ちを抱いて、ヨウに事情を説明する。


「いや、そのな。この赤髪の不良さまが、俺の教室に押しかけて来たんだ。俺、弁当持って逃げていたんだけど捕まって。で、殴られそうになった時、自己防衛が働いて弁当を放り投げて身構えたら、赤髪の不良さまの頭に弁当の中身を落としてしまったという」


「さ、サイッコー。お前、なんで弁当片手にッ、ククッ……腹痛ぇ」

「だって弁当は食わないと勿体無いだろ! 俺、これでも逃げながら飯を食っていたんだからな!」


「器用過ぎるだろッ」


腹抱えて笑うヨウに俺は「だって」と口ごもって、赤髪の不良さまの方を見た。青筋立てている赤髪の不良さまが俺の方をギロリと睨んでくる。


うわぁ、怒っている。怒っちゃっている。


けど、米粒とか、さっきの真っ赤なタコさんウインナーとか思い出すと、笑いが込み上げてくる。


さっきから我慢していたけど、もう限界。

とうとう俺もヨウと一緒に爆笑してしまった。


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