青騒のフォトグラフ―本日より地味くんは不良の舎弟です―
「ヤラれたから何だ。ダサいから何だ。お前は間違っちゃ判断なんかしてない。
頼むから自分の判断に胸張れ。お前は自分を逃がした。舎弟として舎兄を裏切らなかった。日賀野の誘いには乗らなかった。そう、なんで主張しないんだ」
「利二……」
「でなければ、お前を置いて助けを求めに行った自分の行動さえ……間違いだと思ってしまうだろ。別の手があったんじゃないかと、お前にも自分にも腹が立つだろ。悔いるだろ。どんな思いでお前をあの時置いて行ったと思うんだっ……何も分かっていないッ、お前は何もッ」
顔を背ける利二に、俺も手を下ろして俯いた。
不思議と目頭が熱くなった。フルボッコされた時も、ヨウ達の前でも気丈に振舞えていたのに、利二のヒトコトで張り詰めていた気持ちが緩む。
抑え付けていた悔しさが襲ってきた。
熱くなる目頭を冷ますように頭を軽く振った、けど、視界が滲む。俺の力でもどうしようもない。意思に関係なく勝手に視界が滲む。
それがまた悔しくて、掌に爪を立てた握り拳を利二にぶつける。
本気でぶつけたいのにカラダに力が入らない。ぶつける拳の力、メッチャ弱いと思う。情けねぇ。
「おまっ、そういうことは……先言えよ……なんだよ。なんなんだよ」
利二のカラダを叩いた。何度も何度も。
「なんだよ……としじっ、だって……分かってねぇよ……おれが、あの時、どんなおもいでっ」
利二は何も言わない。
何も反撃してこない。
何かぶつけてくれたらいいのに、さっきみたいにぶつけてくれたらいいのに。
じゃないと今の俺、スッゲェダッサい奴だろ。
一方的に感情ぶつけている俺、癇癪起こしたガキみたいだろ。
馬鹿みたいに情けない拳を利二のカラダにぶつける。手が止まらない。止める術を知らない。同じ動作を繰り返す。
ふと手が止まった。
俺の意思で止まったんじゃない。止められたんだ。
ノロノロと顔を上げて、叩いていた自分の手に視線をやる。何度も叩く手を止めてくれたのはヨウだった。
「もう、いいだろ」
ヨウの言葉で俺は項垂れて身体の力を抜いた。
惨めだったんだよ、日賀野に太刀打ちできなかった自分が。フルボッコにされた自分が。
情けなかったんだよ、日賀野の誘いに少しでも乗ろうとした自分が。利用されそうになった自分が。
許せなかったんだよ、利二を巻き込んだ自分が。ヨウ達に背を向けようとした弱い自分が。
「……なんだよ…っなんなんだよ」
「ケイ……」
滲んだ視界を振り切るように俺は俯いて下唇を噛み締めた。
何よりも悔しかった。ヨウの舎弟とかさ、不釣合いとかさ、そんなの関係なしに、ただただ悔しかったんだ。
「ダッセェ。だっせーの……」
すっげー、悔しかったんだ。