君が隣にいる意味を教えて
広場のステージでバンド演奏が始まるようだ。
その中の何人かは確か私と同じクラスだ。
「2週間前に結成したばかりの文化祭のためだけのバンドです!
よろしくお願いしまーす!」
屋台から歓声。
このノリ嫌いだな。
そして始まるメロディーに定番なラブソング。
私はぼうっとセンターにいるギターを持った彼を見た。
あの人…同じクラスの人だよね…。
クラスじゃあまり目立たないのに、今日は―。
「―志穂が男子を見入ってるのは珍しいね」
隣で千尋がクスッと笑う。
私はハッとして、ステージに背を向けて歩き出した。
―バカじゃないのか、私。
このとき、彼に気を許していたら、彼の歌声はどんなふうに私の耳に届いていただろう。