君想論 〜2人のサヤカ〜


別に大して驚くことでもない筈なのだが、[梧 清花]がこんなに饒舌(じょうぜつ)に話していることにやや驚愕している桐野くんである。

現段階での[梧 清花]の印象は、取りあえず社交的ではなくて無愛想。それでいて、ぽやや〜んとした雰囲気も放つことが出来る無口な転校生、ってなところだ。

こんなにペラペラと舌を回す姿は、まだ桐野くんのフォルダには入っていない。


まぁ、こんなスムーズに話をかけられそうな空気は初めてだ。

ここは責めて、話題を振ってみよう。




「それにしても、変わった杖だよなソレ」

「………????」


首を15゚ほど傾げながら無表情で此方を向く転校生。

何故かその真っ直ぐな瞳にちょっと仰け反った。


「いや……初めて見る形だったからよ……」

「ロフストランドクラッチです……」





……………





「ロ…ロフ……何……??」

「ロフストランドクラッチ……この杖の名称ですけど……」


は…はぁ……

そんな専門的な名称を告げられても……


「そっか……」

「そうです……」






……会話が死んだ……


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