チャンピオン【完】
そんなこと聞いていません。
その後話しかけても来ません。
あのデートで『やっぱりそうでもなかった』になったに違いない。
って言うか、いつと比べて綺麗になった?
「会ったことないよ、あんな奴」
「まぁそうか... 10年前だと詩は7歳だもんな。
貴丸がここに来始めたばっかりの頃、オヤジに完膚なきまで鼻っ柱折られて、拗ねてたわけ。辞めてやるー!ってさ。
そしたら、遊びに来てた詩が寄って来て、
『このお兄ちゃん何処が痛いの? しょうがないなぁ、詩が半分もらってあげる』
って言って、空気中のなにかをパクリと食った」
「へ、へぇ... 」
私、何食べたんだろう。
「きっと詩が天使のように可愛かったから、考え直したのだろう。今の貴丸があるのはお前のおかげだ☆ 奴も感謝している。はず。」
「...... ふぅん」
そんなのは、最初から辞める気なんてなかったんだよ。
「なんだか反応が薄いな... ?」
「そんなことないよ、ふーんと思ったもん」
「そういえばもう一回会ってる... でも興味なさそうだから、これはいいか」