チャンピオン【完】
「ジャーマンスープレックスってなに?」
私がプロレスを全くと言っていいほど知らない事は最初に言ってあったのだが、了くんは忘れていたようだ。
「ああ、... ほんと知らないんだなぁ。
起きて! しげるん!」
了くんの枕に幸せそうに顔を埋めていたイケメンの肩を叩き、無理やりと言っていい強引さで床に立たせた。
「なんだよ? なにすんの」
涎を手の甲で拭っているイケメンの背後に立ち、了くんは彼の腰に両手をまわした。
そこから持ち上げようとしているようだけど、全然無理だった。
諦めた了くんが、空気だけを後ろに投げ飛ばす仕草をして見せた。
「で、実際はこのままね... 反り返って後ろに頭から叩きつける。それでブリッチして、ホールド。やってみせたいけど、これ俺じゃ無理だったわ。しげるんデカすぎ」
「ちょ... やめてよ、俺これからデート! 死ねないし?」
「だからベッドに向かってやろうとしてたじゃない」
「こえーこえー... ジャーマンスープレックスかよ。
危うく三好みたいに殺されるとこだったぜ... 」
イケメンはヒィヒィと言いながら、窓枠を飛び越えて帰って行った。