チャンピオン【完】
「インタビューみて思い出したけど、史郎さんも可哀想だった。
つーかインタビューするなよな…
この番組けっこうエグいことしてるよ。
自分の親友を殺したって言われるのが、自分の愛弟子なんだからさ。
でも親友が死んで悲しい中、こうやって堂々として出てきて、貴丸の事も守りきった。
詩ちゃんのオヤジさんはすげー人だよ」
そうかな...。私にとっては、ただの飲んだくれのエロオヤジだ。
愛弟子だか親友だか知らないが、パパの愛人の名前なんかパピコだ。
それは関係ないとして、ちょっと気になった事が合った。
「そういえばさ、さっきの試合の時の貴丸の背中、刺青ないね?」
「ああ、... さっきやったジャーマンスープレックスって技、頭から落とすんだ。
たぶん逆さで三好が死んだから、逆十字。
追悼なのか、贖罪なのか、本人じゃないからわかんねーけど。
どっちにしても一生背負ってくって決めたんだろ、...
このドラマ性! 男の世界! 女にはわかんねーだろうなぁ」
了くんは他人事だから、頷きながらうっとりとしている。
私は、お礼を言って部屋を出た。
帰り道、いろんなことが一気に納得できたことで、逆に私は混乱していた。