灰色の羽
ごとり、




何かが動く、




私の胸の中、




心の奥底にある何かが音を立てて…



だまってて!
いまはそれどころじゃない!



彼女の体、お腹には多くの殴られたような青いあざ、胸のあたりにはすり傷やナイフのようなもので切られた切り傷、



背中を向かせた。



同じような傷やあざが背中にもたくさんあった。

赤く膿んでいるものも。

そして、腰のあたりにはタバコの火を押しつけられた痕が痛々しく残っていた。


まずい、止められないかも…


「…パト」


「ん?」


浴槽の方からパトの返事が聞こえた。


「お湯、ぬるめにしてあげて、たぶん…しみる」

数秒あとに、わかったと声が返ってきた。
頭のいい奴だ、すぐ理解してくれた。


すぐに私も衣服を脱いだ。
その子にバスタオルを掛け、手を引いて浴室へ導く。

その手は氷のように冷たかった。


浴室のドアを開け、
「パト、もういいわ。あとは私がやるから」


パトは私のあとに静かに少女に目をやったのち、


「わかった。」


それだけ言って浴室から出て行った。


その後ろ姿に、
「あとあんたの部屋から救急箱持ってきて。それとコンビニ行って牛乳買ってきて。」


無言が肯定だと背中で感じた。
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