灰色の羽
はぁ、と一つため息をついて、


「おはよ。」


なんの反応もないが、その目は私を捉え続ける。

「あんた自分がなんでここにいるか覚えてる?」


反応なし。



イラつく。
だから嫌いなのよ。



私は少女の前まで行き腰を下ろし語気を強めて言った。


「うんとかすんとか言いなさいよ!こっちは見ず知らずのあんたを保護してあげ…」
言葉を全て言う前に気付いた。


少女は私を見ているわけではなかった。


見ているのは私の左手、つまり…



あぁ、そうか。



少し自責の念を感じた。

リビングに戻り、灰皿でタバコをもみ消し、洗面所で歯を磨き、また少女の前に戻った。



「ほら、もう持ってない。匂いだってもうしないでしょ?」
はぁ、と息を吹きかけた。


怯えの色はすぐに消えた。


「べつにあんたをとってくったりなんかしないわよ。」



そんな甲斐性ないわ。



少女の目はようやく私の顔に向かった。



大きな目、



顔色は昨日よりはずいぶんましになった。



「あんた名前は?」



沈黙。



少女は何も発さない。



「はぁ、まあいいわ。」私のイラ立ちはいつのまにかおさまっていた、不思議なことに。



別にこの子と仲良くなりたいわけでもない。
ご機嫌もコミュニケーションも取る必要なんて私にはない。


「いつまでそうしてても仕方ないでしょ。食事くらいは食べさせてあげるわ。食べないとあんたたぶん死ぬわよ。」


いらっしゃい。


そう言って部屋の入り口まで歩きドアを開いて少女を促した。


その子は少し考える仕草、まぁ子供がなにを考えるのか私に知ったことじゃないけど、をした後にシーツをはなし立ち上がった。
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