いばら姫と王子様 ~AfterDays~
§変わるモノ、変わらぬモノ

 └櫂Side*****

 櫂Side
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東京を襲った大災害。


紫堂財閥は何処よりも早く、都民の救助活動と莫大な資金援助をした。


俺が指揮をとったのは、罪悪感によるものが大きい。


被害が甚大な東京の中心部に構えていた紫堂本家が、ほとんど無傷でいたのは、偏に親父率いる紫堂の力によるものだったのだが、それをひた隠しにしている表の世界では、妬みやっかみから災害自体が紫堂財閥の陰謀と囁かれることもあったらしい。


だがそれも、紫堂傘下の絶大なる経済的損失補填を後回しにして、迅速に東京救済活動を優先したのが功を奏し、思っていた以上に世評が高まったのと、玲の力によって敵意ある流布自体ねじ伏せられ、結果的に紫堂財閥は、己が犯した罪を利用して好印象を世俗に与えた格好になった。


そして紅皇の復帰と氷皇の昇格により、元老院における紫堂の地位は優遇すらされ、少なくとも元老院の前で冷遇されずともよい地位になった。


紅皇と氷皇については、俺達が預かり知れない何かの絆がある。


あの2人は、犬猿の仲に振る舞っているが実はそうでもないのだろう。


氷皇が元老院になるから紅皇は復役したのだろうし、紅皇が復役するからこそ氷皇は元老院になったのだろう。


彼らは、共通の何かを狙っている。



そして多分――


それは俺が望んでいるのと同じ事、ではないかと思っている。
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