いばら姫と王子様 ~AfterDays~
 
桐夏の帰り、揚々とポケットから取り出してつけたネックレス。


「……犬の首輪、ですの?」


「ちげ~よッ!!!」


やはり桜からはいつも以上に冷めた眼差しで言われた。


昔からいつもこいつはこうだ。


「黒尖晶石(ブラックスピネル)?」


さすがは櫂。


ダイヤの輝きじゃねえこと、見抜いちまうんだな。


哀しいけれど、櫂は真実の輝きっていうのは見えちまうようだ。


櫂の目には、俺はどう映っているんだろう。


やっぱり俺も、安っぽい紛い物と思っているのかな。


何だか急に気分が沈みこんだ。


「煌。お前はお前だ。俺はお前を軽んじたことはない。軽んじていたならば、俺はこんなに……」


櫂は言葉を切り曇った空を仰ぎ見てから、切なげに微笑んだ。


その意味する処が判り、俺は唇を噛んで思わず俯く。


悪い、櫂。


それでもどうしても。



俺は芹霞を諦め切れねえんだ。


俺、こんなにいい主に巡り合えて、凄く恵まれているというのに。


お前本当、身も心もいい奴なのに。


それでも芹霞が欲しいんだ。


欲しい心が収まりきれねえんだ。


俺のネックレスが、どっしりと重くなった。


それは枷のように。
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