いばら姫と王子様 ~AfterDays~
 
その櫂がネックレスをつけた。


守護石のペンダントをトップにして。


開いた胸元の隙間に、そして無意識に櫂が伸ばした手の中に、見慣れねえ異物を視界に捉えて、それがアクセサリーだと気づいたのはつい最近。


あいつは見せる気も隠す気も、最初から何にもなかったに違いねえ。


あれは見せびらかす装飾用のためじゃない。


きっと――芹霞の想いの結晶だ。


ああ、日常的になっている"嫉妬"に胸が苦しい。


櫂からちらりと覗く、細い黒革の紐のネックレス。


そのシンプルさが、何だか凄え格好いい。


こいつ、飾り付ければ益々美しさに磨きがかかる。


俺の太陽石のピアスなんて何て安っぽいことか。


そう考えたら、俺も黒いネックレスがどうしても欲しくなって、俺の派手な橙色を抑えるクラシックタイプのシルバーを店舗で見て回って。


それで巡り合ったのは、黒尖晶石(ブラックスピネル)のネックレス。


これをつけて行ったら、芹霞は何ていうかな。


少しでも格好いいとか思ってくれるかな。


俺は期待に陽気になって、今日も神崎家の掃除を大張り切りだ。

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