いばら姫と王子様 ~AfterDays~

私の手には、鎖の切れた十字架。


我が身を犠牲にして磔になった、救世主イエス・キリストの姿はそこにはなく、


代わりに十字架に絡まっているのは怪しげな蛇。


それはまるで、エデンの園でイブを誘惑した蛇の如く、こちらに向けて口を開いている。


私を誘惑する気か。


私はそんなものには揺るがない。


信じられるのは力。私自身。


蛇は私を見ている。


切れた鎖と十字架を補修して繋いでいるのか、わざとらしく針金がまきついている。


針金を外せば、何かが変わるのか。


"力"という紫堂に縛られている私も、何かが変わっていくのか。


何とも抽象的なその十字架を私は握り締める。


彼は何者なんだろう。


暗紫色の服と瞳。


私を知った風の、正体不明な男――。


――また、お会いしましょう。


それは予感。


近い未来、きっと私はまた会うだろう。


そんな予感がした。




―*―*―*―*―*―*―*―*―*―*―*―


「蛇に誘われ、行き着く先は何処なのだろう。至福か堕落か。私は――自分の心が判らない」





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