さよならさえも、下手だった
《どこに行くの?》
肩を叩かれて振り返ると、音都がそう書かれたメモを俺に掲げて見せていた。
そういえばまだ行き先を教えていなかった。
「俺の棲みか」
…大っきらいな、棲みか。
闇の中をくぐりぬけるように人気のない場所を選んで歩き、路地の奥を進んでいく。
音都が来ているかどうか、時折後ろを振り返りながら。
「着いた」
路地の奥、決して人が入らないような場所に俺の棲みかはある。
「…入るぞ」