さよならさえも、下手だった
その名の通り、彼が人を殺すのはほんの瞬きする瞬間。
殺すことに何のためらいも苦しみも持たない、刹那の出来事。
初めて彼の仕事を見たとき、体中が悲鳴を上げた。
その場に立っているだけで息絶えてしまいそうだった。
俺にとって彼は、別世界の人間だった。
「おい刹那、情報伝達ぐらいちゃんとしろ」
今この声は震えていないだろうか。
刹那と話すとき、俺はいつもそう思いながら話をする。
「情報?ちゃんと渡しただろう」
「声が出ない奴がいるなんて聞いてない」
刹那がふ、と笑う。
「なんだ、そんなことか」
「そんなことってなぁ…」
骨の髄まで凍らせるような威圧感に満ちた声で、ただ一言。
「どうせすぐに殺すんだ、声が出るかどうかなんて知る必要もないだろう」