さよならさえも、下手だった


――なぁ、1004?


1004ってなんだろう。
夜十の特別な呼び名かな。

でもそれより私にははっきりとわかることがあった。


このままここにいたら…殺される。

本能がそう感じ取るのに体がなかなか動かない。
体中の筋肉が固まっている。
それを動かしてくれたのは、


「逃げろ!!」

という夜十の声。

次の瞬間金縛りから解けたように体が動いて、しゃがみこんだそのとき。


「…っ」

ナイフとは思えないような音が私の鼓膜を震わせる。
頬に鋭い痛みが走った。


< 16 / 95 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop