さよならさえも、下手だった
じくじくと浸食していくような不快な痛さの中で眠りにつき、目が覚めると隣では見知らぬ少女が眠っていた。
「…?」
一応銃を構えつつまだよく働かない頭を動かすと、その少女の名前はすぐに思い出した。
そして、その少女が言葉を発する術を持たないという事実も。
考えれば考えるほどわからない。
音都がどうして俺についてきたのか、どうしてまだここにいるのか。
逃げる隙ならいくらでも与えた。
昨夜寝ぼけた振りをして音都に銃を突きつけたのだって、それで音都の心境が変わると思ったからだ。
なのに音都は逃げなかった。
今もこうして殺し屋の隣ですやすやと気持ちよさそうに眠っている。
どうしろっていうんだ、一体。
「おい、起きろ…」
しかたなく肩を揺さぶって起こすと、目覚めたばかりでとろけそうな瞳と目が合う。
俺の中で何かが大きく揺らいで、それを抑えるために奥歯を喰いしばった。