さよならさえも、下手だった


すると彼は突然口元を歪めて微笑み、

「バカじゃねぇの」


彼の意図がよくわからない。
バカとののしられた理由も。

「殺す気があるんなら、こんな奴とっくの昔に殺してるだろ」

その言葉に反論することができなかったのは、言うまでも無い。

確かにそうだ。
音都は殺さなければいけない奴で、殺そうと思えばいつだって殺せた。
でも俺がそうしなかったのは、

「…?」

どうして、なんだろう。


コンセントが抜けたように思考がぶつんと停止して動けずにいる間に、彼は音都の首にかける手に力を加えた。

ひゅうひゅうと音都の喉から苦しそうな息遣いが聞こえる。
その瞬間我に返って、俺はその手を力いっぱい振り払った。


そんな行動をとったことに、どうしても何もないような気がした。





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