甘くも苦い誘惑に溺れて


「…お前」




唖然と私を見つめる彰ちゃん。



私もびっくりしていて…足が動かない…。



まさか…会ってしまうなんて。



暫く沈黙が続いたのちに沈黙を破ったのは彰ちゃんだった。




「…仕事で来たのか?」


「…え、ええ。…私、帰るわね。おじさん、お元気で居て下さいね」




私は鞄を手に取り急いで病室を後にする。



私の名前を呼ぶおじさんの声がしたけど、私は咄嗟に気付かない振りをした。



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