屍都市
美原市の地下鉄はそれ程大規模なものではないものの、市外まで続いている。

うまくすれば一気に美原市から脱出する事も可能だった。

こんな脱出経路が、ゾンビ達に包囲される事なく残されているのは意外と言えば意外だ。

だがお陰で危険を冒す事なく、彼らは脱出する事ができる。

「一時はどうなる事かと思ったけど、この分だと何とかなりそうですね」

安堵の溜息をつく理子。

「そうね…地下鉄の路線にまでは、ゾンビも来なかったのかしら」

先程まで緊張の糸を張り詰めていた純も、多少気を緩めたらしい。

ここに来るまでに、ずっと想像を絶する危険と隣合わせの逃避行を続けていたのだ。

彼らが油断するのも致し方ないと言えた。

人間というのは、緊張状態を長時間持続している事などできないのだ。

だが…。

その油断に付け込むように、それは突然起こった。

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