屍都市
足音だけが響く地下鉄の線路。

薄暗く、砂利が敷き詰めてあるせいで歩きにくいものの、ゾンビが潜んでいる気配はない。

とはいえ元々気配を感じさせないゾンビだ

油断はできないのだが。

「遠足みたいだねぇ」

雄大が理子と繋いだ手をブラブラさせながら無邪気に言う。

「雄大、呑気な事言わないのっ。いつゾンビが出てくるかわからないのにっ」

先頭を歩く純が軽くたしなめる。

「まぁまぁ…いいじゃないですか純さん」

苦笑いしながら理子が言った。

これまでと違い、大勢の仲間と共に行動が出来る。

単独行動を苦手とする理子も、多少気の緩みが出てきていた。

「あ、あまり緊張し過ぎるのも、どうかと思いますよ~」

最後尾から山田が言った。

「今の所ゾンビも追ってきていないみたいですし…少しは気を楽にしないと、精神的に参ってしまいますよ」

幸羽も気を張り詰める純にそう促した。

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