屍都市
幸い暗がりに潜んでいたゾンビはその一体だけだった。

「大丈夫ですか、理子ちゃんっ?」

山田が声をかける。

「は、はいっ…何とか…」

突然のゾンビの襲撃に青ざめながらも、理子はコクコクと頷く。

「雄大君は大丈夫?」

すぐに手を繋いでいる雄大の顔を覗き込む理子。

その理子が、表情を強張らせる。

「ゆ、雄大君っ!?」

…小さく小刻みに体を震わせる雄大。

「いっ…痛いっ…痛いよっ!痛いよぉっ!」

彼の右手の甲に、引っ掻き傷が出来ている。

先程の回避の時、雄大は避けきれずにゾンビの爪に引っ掻かれていたのだ。

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