屍都市
そう。

夜の世界の頂点を極める為に努力してきたのだ。

決して。

「く…!」

腐った臭いを漂わせる死体と鬼ごっこをする為に、この街に居続けた訳ではない。

秀一達と別れて繁華街に訪れた天野は、そのあまりにも無惨な光景に口元を覆う。

この通りに、彼の所属するホストクラブ『ジュピター』はある。

美原市でも一等地に位置する店舗。

当然美原市一の人気店だ。

『ジュピター』でナンバー1になるという事は、少なくとも美原市でナンバー1のホストだという事だ。

その一等地に今徘徊しているのは、血と脳漿と体液に塗れ、腐った臭いを発散させながら呻き声を上げる亡者の群れだった。

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