【完】歌姫、そんな声で鳴かないで!
社長はおもむろに煙草を取り出すと吸いはじめる。



「…なんたって、あの子に愛なんて生温い感情は、無意味だもの。」



それはヤスの過去への入口を指す言葉。



私はそう読み取り、返事をしない。



煙草を加えた色っぽい唇が、煙と共に声を吐き出す。



「愛なんて、そんなものではヤスの闇は晴れない。手を差し延べるなんて無理だわ。」



彼女が語るヤスの過去は、21歳の男の子が背負うには、あまりに暗くて、痛い。



確かに、愛なんて生温い感情、ヤスを救済するものにはならないのかも、しれない…。
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