【完】歌姫、そんな声で鳴かないで!
「くっ…そ!意味、分かんね。」



そう呟いたヤスの背中は、背中越しに震えているように感じる。



きっと、今度は涙を流して泣いている。



本人は強がって嗚咽を小さく小さくしているけど、静かな空間にその努力は無駄なもの。



私は、視界の端に映るヤスの右手の上に、自分の左手をそっと重ねた。



背中から伝わる温もりと震えで、ヤスがもっと泣き出したのが分かる。



いいよ。今は泣いて泣いて、疲れるまで泣いて、眠ればいい。



そして、起きたとき、腹の底から笑えばいいよ。
< 208 / 295 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop