【完】歌姫、そんな声で鳴かないで!
「奴らが憎いのは、変わらない。けど、歌で『泣く』のはもう辞めたから。」



「そ…か。」



それは私が一番望んだこと。だけど、ヤスが一人で光へ向かう力を持って、私は少し寂しい気持ちになる。



「だけどね、アスカ。俺は弱い。すぐ闇に縋る。自分で堕ちていくから、だから。」



穏やかな声が途切れたかと思うと、私はすっぽりとヤスに包まれる。



「その時は、また、その頼りない細い手を、差し出して。俺はそれで歩けるから。」



「分かったよ…何度だって、そうする。」



ヤスがそう、望むなら。
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