君が教えてくれたこと
由梨が入院してからというもの、僕は誰よりも早く教室を出ていた。
「北山さ、毎日、由梨のとこ行ってるんだって」
折越が、皆の前で、話を切り出した。
「何の病気なの?」
岡田も、入院したこと以外は、何も知らなかった。
「まだ、検査中みたい。ねぇ、何か私達にも出来ること無いかな?」

「皆でさ、お見舞い行こうよ!」
真由美が、幸太朗の頭をポンポン叩きながら言った。
「それが、一番いいかも」
真由美の腕を掴み、冷静に幸太朗は発言する。

もう、お互い慣れていた。
「じゃあ明日は、渡辺さんに会いに行こう!って、病院何処だか知ってんの?」
岡田の質問に、全員が目を逸らした。
「先生に聞こう」
口を開いたのは、幸太朗だった。
「そ、そうだね」
折越の言葉に変な団結が生まれた。
「たまには、良いこと言うじゃん」
真由美が、幸太朗を初めて褒めた瞬間だった。
由梨は、部活最後の大会には出場することは出来なかった。
病室では特別することも無く、二人で漫画を読んで過ごしていた。
「今日、お母さんは?」

「今日は、用事があって来れないって言ってた」

「そうか」

「なんかあったら、優ちゃんにお願いしてって言ってた」

「うん」

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