先生あのね・・・


二人で近くのファミレスに入り
向かい合って座った。




始めは他愛のない話だけだったが

注文をしたメニューが運ばれてくる頃には

高橋さんの話題の中心は直江先生の事だった。






高橋さんは先生の事が本気で好きなんだ…






私がかける言葉を見つけられずにいると

高橋さんは

「直江先生のこと協力してくれない?」

と切り出した。








「…ごめん。私は協力できない」


私がためらいながら答えると


「それは相手が先生だから?」


高橋さんは不安そうに私を見つめた。



「違うよ。相手が先生だからじゃないよ。

好きになるのに立場なんか関係ないと思う。

ただ、好きになったのが
先生だっただけ・・・」







「じゃあ、どうして?」





高橋さんの本気が伝わってきて
私も本気で返さないといけない気がした。




私は小さく深呼吸を一つした。





「私も好きだから・・・」





高橋さんは少し黙った後で


「そうだったの・・・・」


呟いて俯いた。



「ごめん・・・・」


私は瞳いっぱいに溜まった涙がこぼれないようにこらえながら言った。


「私こそごめん。
勝手な事ばかり言って・・・。

じゃあ、お互いに頑張ろうね。」



そう笑いかけてくれる高橋さんを見て


こらえきれなくなった涙が頬を伝っていた。






私は誰かを傷つけることが

裏切ることがこんなにも辛いことだと


初めて知った。
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