禁断の恋はじめます
「お兄さんなの?」看護師が目を丸くした。


「はい。兄なんです。
もうずっと会ってなかったから…。」



「朱奈……。」
啓吾が呆れた顔でまたベットに横たわる。


「わかったわ。じゃあありがと。
後は任せておいて。あ~ホント池端さんだ…。」

看護師が離れると啓吾が



「おまえの兄貴はもういないんだ。」


そうつぶやいた。
わかっていた。
思い出はキレイな方がいい……
でも現実にここにいるのが……
あの家族の太陽だった啓吾だった。


今はよどんでいるけど
啓吾を離してはいけない気がした。


「とうさんやかあさんに絶対言うなよ。」


「ママ会いたくて毎日泣いてるわ。
泣き過ぎて嘆きすぎて……
もう家族は崩壊寸前だよ。
私には啓吾の変わりはできない。」


啓吾の顔が一気に暗くなる。


「それでも…俺はもう過去の啓吾じゃない。
二人を失望させたくないんだ。
おまえも……これ以上 俺に関わらないでくれ。」



啓吾の苦しそうな言葉の
意味もわかったけど……


ここで会えたのには
何か意味あるんではないだろうか



後ろ向きの啓吾を残して
仕事場に戻った。


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