光と闇
ギルディは目を硬く瞑り、背をアートに向けた。
「俺ら、所詮は偽善だったんだな」
アートの陰が微かに動いた気がした。
ギルディはゆっくり目を開けると足を前に出し、一歩一歩歩みを進めた。
別れの言葉は言えなかった。今までの思い出がそれを邪魔した。もう二度と会えなくなるんじゃないかと思うと悲しかった。だからせめて、別れは告げなかった。

ギルディが去った瞬間、闇から嗚咽が聞こえた。
アートの陰が激しく揺れた。
「う、ぇぇ・・・ギル、ディ・・・うぁ、っく」
アートは暗い闇で涙を拭った。止め処なく流れる涙を強引に。

そして二人は二度と会うことが出来なくなった。
対立は大きいモノとなった。
二人は別れの決意とし、二つの宝を分裂させ、国を作り上げた。
一つは光の国と名をつけ、太陽を広大な大空に。
一つは闇の国と名をつけ、月を星が輝く夜空に。
二つの国は、もう一方の宝を見ることが出来なくなっていた。つまり、光の国に夜が来る事はなく、闇の国に朝が来る事はないのだ。

ギルディもアートも神の力を持ってして国を作り上げ、この世を去った。何とも悲しい物語。
そして、当たり前のように朝と夜を繰り返していた一つの大きな国は、二つに分裂し、空にはギルディとアートの分裂の証が刻まれていたのだ。
この二つの国が、もう一方の宝に恋焦がれ、両方を手に入れようとする者が増えた事から対立した争いは、また次の話である。

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