光と闇
空を見ればさっきより暗くなっている。
「こりゃ・・・俺って方向音痴なのか?」
魅楼は自嘲気味に笑った。と、その時だった。ガサガサと周りの葉が揺れ始めた。何か居るのだろうか、と目を凝らした。
もし、獣だったらどうすんだ?と不安が過ぎる。
ガサッと大きな音がして、大きな黒い物体が姿を現した。
「ん?誰、お前」
物体が言葉を発した。否、物体じゃないのだ。
「人間?」
「当たり前だ、バカヤロウ」
呆気に取られ、呟いた言葉をすぐさま突っ込まれた。服装があまりよくないことから、奴隷、もしくは兵士だろう。
そこまで思考がきたときに、ある選択肢が増えた。
闇の国の兵士か――・・・だったらヤバイ。
魅楼は最悪の可能性に顔が引きつる。が、その疑問はすぐに消え去った。
「お前・・・光の国民だろ。闇の国に近付いたら危ねぇじゃん。さっさと家に戻りな」
見るからに男だったが、まだ幼さが残り、青年と呼べるほどの人だった。頬には切り傷があり、今まさに争ってきたと語っているように見えた。
それに、光の国民を心配する闇の国民はいない。この人は確実に光の者だ。
「ここ、どこですか・・・」
魅楼は助けを求めるように言った。と、言うより力が抜けたように弱弱しく。森の中を歩いた疲労からか、それとも光の者に会った安心感からか、眠くなってきた。
「は?何言ってんの?ここは零だよ。それより、早く帰れって。ここ危ねぇか・・・」
「どこだ、あんのガキッッ」
青年の言葉をかき消すように、静かなこの場には似つかない無粋な声が聞こえた。
青年はびくりと肩を震わせ、声の方向を見た。そしていきなり魅楼の手を引くと、走った。
二人は物陰に入り、葉っぱで身を隠した。
「なめた真似しやがって」
「クソッ・・・殺し損ねるなんてな」
殺すと言う言葉に、魅楼は反応した。隣で座る青年が体を動かすと、狭いこの場所では一緒に魅楼も体が動く。
足音が遠くに去ると、青年はため息をついた。
「殺される前に俺が殺してやるのに・・・」
そう呟くと、葉を強引に掻き分け体を起こし、立ち上がった。
魅楼は一緒になって立ち上がると、青年は魅楼の顔を見つめた。
「お前、名前は?」
いきなりのことで驚いたが、「・・・魅楼」と呟いた。
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