光と闇
魅楼は足を止めた。その行動に三人は魅楼に目を向ける。
「・・・おい、魅楼サン、どうしたんだよ」
霧澄が魅楼の目の前で手を振るが、反応はなかった。さすがに異常事態だと感じた三人は、魅楼を一旦抱え、洞窟の壁に寄りかからせた。魅楼は何も抵抗をせず、ぐったりとなっていた。瞼だけは開いていたが、何も見えていないようだった。
紅蓮は肩を叩き、呼びかけたがやはり反応はなかった。紅蓮は苛ついたのか頭を叩こうとした。その手を翠柴が止めた。
「気絶してるよ。多分、環境が変わって疲れたんだよ」
「結構、無理してたんだよな」
霧澄は魅楼の顔を見た。魅楼はどこも見ていないようすだった。霧澄は手を伸ばし、魅楼の瞼を閉じた。
「自分を犠牲にするところ、自己管理が出来ないところ、全部似てるね――」
翠柴は目を細め、呟いた。二人は静かに頷いた。
時間が経っても魅楼が起きないのを見て、霧澄は立ち上がり魅楼を担いだ。
「おう、霧澄。俺が持とうか」
身長が霧澄より高い紅蓮が申し出たが、霧澄は首を横に振った。
「いや、大丈夫だ」
その言葉は静かに洞窟に響いた。

寝かされている感覚がした。背中に当たっているゴツゴツとした硬い寝床に違和感を覚えていたが、力が出ない。重力に逆らう事が出来なかった。
「ん・・・」
声を漏らし、重い瞼を持ち上げる。最初に見えたのはゴツゴツした天井で、周りを見れば、ここが洞窟の小さな部屋になったところだということがわかった。蝋燭が何本も立っていた。
自分の体を見れば、干草が体にかけてあった。干草の独特の匂いが鼻をくすぐった。
重い体を無理矢理動かし、起き上がった。
「おう、起きてたのかよ」
いきなり背後から声が聞こえた事に驚き、立ち上がろうとするが、体が言う事を利かずに力尽き、干草の上にうつ伏せに倒れる。
「まだ動くなよ、疲労が限界まで来てるんだろうからな」
魅楼は動けない事に唸った。
声の主はわかっていた。霧澄だ。
霧澄は倒れている魅楼にも見える位置に移動した。
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