トリップ

イケナイキモチ


あれから2日。
登校日だった今日、キャプテンは面倒臭そうに制服に着替え、学校に向かおうとする。道の途中、エリカから電話がかかって来た。

「キリちゃん今日、家におらへんの?」
「ゴメン!今日うち登校日やでさ!」
「あー!そうか、頑張って!」
「どーも!」

電話を切ると、キャプテンは校門をくぐり、校舎に入って行った。
階段を上がり、自分のクラスに入ると、椅子に座る。そして、うるさくならないように携帯の電源を切っておいた。
ここまではいつも通り。

しかし、その「いつも通り」は昼休みまでということを、キャプテンはまだ知らなかった。


………

アイツ、何してるかな?

ケイラは依頼を完遂させ、佐野の事務所の窓から顔を出して空を眺めている。

『うちに楽しいことがあると、いつも雨なんだよなぁ』

キャプテンがそう言っていたのを思い出す。

「ってことは、お前は楽しいことはしてないってことか。」

そう言いながら、ケイラは快晴の空を眺めた。

「いや、悪くしたら泣いてんじゃねぇかな…?」

一人でぶつぶつ呟いていると、同僚の坂見がケイラの隣に来る。

「ヘェ、フランス人は空を見て独り言言うのが好きなの?」
「完璧なフランス人じゃねぇって何度言えば分かるんだよ。ハーフだって。日本産だっつうの。」
「何、あんた品物?」
「うっせぇな」
「そういうのは、日本出身って言うの。ま、ある意味当たってるけど。」
「何で。」
「日本産のピーマン。」
「黙れ」

なぜ彼がピーマンかというと、ケイラは素行からして、表社会ではあまり好かれる人物ではなかったため、その身の上話から、佐野が付けたあだ名だ。
何でも『表社会の嫌われ者』と『野菜の嫌われ者』という関連らしい。

「喧嘩になるとよく言われてたよねー。『給食の残り物』とか『残飯の代表的野菜』とか」
「うるせえって」


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