トリップ
まるで水槽以外のものなど何も見えていないような、そんなリクの姿は不審な恐ろしさを感じさせ、気がついたら、エリカは自分の教室に向かって走り出していた。
怖い人だったな、という気持ちもあったが、何故だろう。その恐ろしさの中に寂しさや悲しさ、不思議さを感じさせるようにも見えなかったことはなかった。
5時間目も6時間目も、あの時の恐怖心や不思議な気持ちが残っていたのか、授業が頭に入らなかった。
そんな感じで帰りがけになると、ドアの方でヒソヒソと声がした。
何か事件でも起こったのだろうか。
近くにいた美喜(みき)に尋ねてみると、興奮した顔でこちらに言った。
「リク先輩が、エリカに用だって!」
リクって・・・あのナマコの先輩(エリカの中でついた第一印象だ)ですか?
先ほど逃げたことを怒っていたのだろうか。