トリップ
「それにあの人・・・どこか・・・不思議な感じが」
「不思議って?」
「人よりもナマコの方がいいとか・・・人じゃないみたいな・・・淋しそうに・・・」
「ああ・・・それはね・・・。たまに変な所から帰ってるし」
「え?」
大して驚かなかったが、少しへんな声が出た。
「ほら、この学校、芸能科があるじゃん?このクラスもだけど。」
「ああ。」
エリカの入っているクラスは芸能科があり、既に芸能人のもの、または今期末に行われるオーディションに参加する者もいる。
彼女もそのオーディションに参加することになっていた。
志望校ではなく、初めからここに入ることになっていたのだが、入ったからにはやるしかない。
「それで、そのクラスに入った人の後ろに守るみたいにくっついて歩いてる時があるんだよね。で、振り返ってみればいつの間にかいなくなってるし。」
「幽霊かその人は」
たしかに、雰囲気は幽霊に見えないことはない。
校舎を出て、美喜と別れると、自分の住んでいるアパートに向かって歩いていった。
歩いていると、後ろのほうで気配を感じる。
(・・・・誰・・・?)
怖くなってきて後ろを振り返ると、誰かが男を路地に連れ込むのを見た。
くるんと曲がった長い黒髪。
それがリクだと気づいたのは、2、3秒経ってからであった。